大分のおいしいネタ、抽出しました。

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気付けば今年で43になる年で、先に書いた中津のセレクトショップに初めて行った時から30年に年月が経っている。
『ハリウッドランチマーケット』をはじめ、当時雑誌に載っていた流行りの服が広い店内に陳列されていて、刺激的なショップだった。心躍ったことを今でも覚えている。

スタッフの方もやはり皆それぞれに違うジャンルであるが格好良く、自分が高校生になった頃。
坊主頭に髭を生やした宮代さんはやってきた。
90年代当時は思いつく人が殆どいなかったであろう、モンペをコーディネートに取り入れるなどのスタイルは、「自分には到底似合わない」と思い真似できなかったものの、先鋭すぎて斬新に映った。まさに宮代さんのオンリーワンなスタイルだった。(また、似合っていたから余計に)
その数年後に宮代さんは独立し、中津で古着屋をオープンさせる。
アメリカンカルチャーへの知識が深く、知らないことを教えてくれた。

自分が福岡の古着屋で働いていた20代前半。小さな子どもをベビーカーに乗せて宮代さん一家がよく古着を買いに来ていた。
そのベビーカーに乗せられていた宮代ジュニアがいつの間にか大人になり古着屋を…なんて聞いた時は時の流れの早さに驚いたものだ。

実際それくらいの年月は過ぎているのだが、信じられない気持ちが強すぎて…。
10年以上会っていないが、当時の宮代さんが作った古着屋の光景が鮮明に思い出されて「どんな店だろう?」と心躍らせながら向かった。
ナビの通りに向かう。

とても古着屋があるような場所とは思えない。閑静な住宅街と田園、傍を流れる川。
しかし、確かにその場所に宮代ジュニアの古着屋『Ropalia』はあった。

恐る恐る中を覗き込む
ドアを開けた瞬間に目に映った光景は古着の壁…?

いや、違う。古着が大量に掛けられたラックだ。
そのラックが店内に縦横無尽に広がっていた。
人がいる気配はない…。

奥に進むと、シャツに値付けをしている人が…

「もしかして…空さんですか?」
「はい、そうです。私が空です。」

なんと、あのベビーカーに乗せられた空君は、本当に古着屋を営む空さんになっていた。
そして、あの宮代さんも出迎えてくれて、久々の再会となった。

宮代尚平さん(左)と空さん(右)

落合商店が福岡で主催している『鳥飼八幡宮古着祭り』出店時の空さん

店内に埋め尽くされた古着や雑貨の壁を見て回る。

商品量が夥しい。
どれも宮代さん親子に選び抜かれた古着たち。

グッドコンディションのレギュラー古着からレア物、キッズ古着や1000円の激安商品まで幅広い。

山のような値付け作業を空さんがさばく横で、宮代さんにこれまでの経緯を聞くことができた。

独立後、寝る間も惜しんでタウンページ片手に各地に問い合わせ、駆け回ったという。
「やっぱり自分の好きな、やりたいことやったから苦にはならんかったな」。

と笑顔で何気なく語るも、自分も1軒1軒飛び込み営業をしてきてわかる日々の積み重ねとその結果。容易ではないことは想像できる。
そもそも宮代さんがここまで古着に、ファッションにのめり込むきっかけとは何だったのだろうか。

「大牟田出身で、熊本とか福岡、小倉で自分が格好良いなと思う人がおって。その人たちからいろいろ教わったような感じがあるかな。ファッションだけじゃなくて、アメリカンカルチャーとかも。ファッションで言えば中でも東京都渋谷区代官山にある『ハリウッドランチマーケット』の女性スタッフの着こなしに凄く影響を受けた。」

なるほど、高校時代から宮代さんの着こなしは何か妙な説得力があった。
「それはバックボーンが滲み出ているっていうことかもしれない。例えばジーンズひとつとっても、ヒッピー、サーフ、バイカーとか多くあるカルチャーの中でバックボーンがしっかりとあることで意識せずともその要素、雰囲気が滲み出る着こなしになるんじゃないかな。でもそれは嬉しいことだね。」

考えて「どう見せるか」ということではなく、好きなカルチャーに正面から向き合った結果ということか。あとは古着の圧倒的な知識もあるのだろう。

「古着に関しては相当勉強した。やっぱり古着を売るということに責任を持つために。それこそ古着そのものについては勿論、仕入れ、店舗運営、接客。今はもう息子にある程度店を任せているけど、昔まだ自分がやっていた時はスタッフがうちを辞めて他に行った時
に恥ずかしい思いをさせないように、自分が持っているものすべてを教えて。
やっぱり古着に限らず何でもそうだと思うけど、知識とかバックボーンはあった方がいいんだよ。ファッションは自由だから強制はしないけど。正直大分の若い子たちもその辺りにもう少し意識がいけばカッコよくなるのになと思っている。

対して熊本の子たちは凄いよ。中学生とかが友達と一緒に買い物して、「これヤバい!」とか、知識がちゃんとあるんだよ。熊本は自分たちが憧れた先輩たちのセンスとか知識がしっかり受け継がれていると思う。もっと大分にカッコいいスタイルの若者が増えるように発信していきたいね。しっかりいろんなカルチャーを教えたい。ただ古着を売るだけじゃなくてね。売るだけなら誰でもできると思う。適当に不当に高い値段をつけてね。それはしたくない。だからこちらもしっかりとそれぞれの古着の背景を説明するよ」。

そう言えば学校帰り、学校のバッグに『グレイトフルテッド』のステッカーを貼っていた自分に話しかけてきたことが宮代さんとの出会いだった。知らずにただカッコいいデザインというだけで貼っていただけだったのだが…。

「そうそう、あったね。おっ、センスいいやん!と思って「グレイトフルテッド好きなんすか?」「何すか?それ。」みたいなやり取りね。
まぁあの時高校生やったし別にいんだけどやっぱりそういうのってさ、たかがステッカーでもTシャツでも自分のアイデンティティの主張っていう面もあるから。やっぱり知っていたり、理解していたり、共感していてこそ身に着けることで説得力に繋がるんだと思うよね。リアルさが出るというか」。

あの頃、PUNKに傾倒しながらも、自分の知らない『Cheech & Chong』などのヒッピーカルチャーなども教えてもらった。
宮代さんを父に持った空さん、古着界のサラブレットだな。あの小さかった空君が。もうその道の人だ。

「いやいや、まだまだです…。」と照れくさそうに笑う空さんだったが、その着こなしには確かな自信が滲み出ていた。
そしてこの宮代さんが中津でやっていた古着屋こそ、「落合商店の週末⑲」思い出のチキン南蛮の記事内で書いた”『居酒屋空』の隣にあった古着屋”だったのだ。

実家に戻り宮代さんの古着屋で買った雑貨を眺めてはあの当時を懐かしく思い返していた。

 

宮代さんは良い意味で、古着屋の頑固親父になっていた。
古着に対する知識や想い。
それを今の大分の若い世代に伝えたいのだと思う。

バックボーンやカルチャーを語れる人が少なくなってきている今、希少な古着屋だ。
そしてまた20年程が経った頃、空さんジュニアが想いを引き継いで古着屋をやっていることだろう。

その頃にまた今の状況を懐かしめるような日々を送りたいと思う。

Ropalia used clothing (ロパリア ユーズド クロージング)
住所:宇佐市上田1249-1
電話:080-3943-4173
営業時間:11:00~19:00
定休日:不定
駐車場:3台
HP:https://www.instagram.com/fulgi_ropalia.oita
<キーワード>
大分/宇佐市/ファッション/古着/古着屋/おしゃれ/コーディネート

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