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第47回目となる「SALLiA’s リトリート」。
今回は、大分市片島に位置する『リトルアトリエスイッチ』に伺いました。

私も自己表現を通してクリエイティブに携わる人間の一人だが、特に自己表現においては、その人から見えている世界の”捉え方”によって、表現方法が大きく異なると思っている。

”愛”について歌う音楽や絵、小説などの作品は数多あるが、その人の人生、見てきたもの、感じてきたもの、それをどう捉えているか?という違いによって、全く違うものとして世の中に発信されている。

そんな見えている世界によって変わる表現方法の面白さを、体感させてくれるのが『リトルアトリエスイッチ』の作品たちだ。

代表を務める安部さんは、双子の男女のお子さんが自閉症という特性を持っていたことをきっかけに、障がいのある人の表現を社会に繋げるために、2018年に『リトルアトリエスイッチ』を立ち上げた。

「子どもたちも大きくなって手がかからないようになった時、当時雑貨ブームで、ネットで、色々と雑貨を見ていたんですね。その中で、障がい者の方が、作った1点ものが世の中にも出始めていて、興味を持ったのですが、正直、商品としての金額設定が低くて、送料の方が高くつくので、これは作った人にきちんと利益還元ができているのかな?と疑問に思ったんです」(安部さん)

障がいのカテゴライズは、身体、知的、精神の三種類あるというが、特に安部さんは知的障がいを抱える方達の手から生まれる芸術やデザインが好きだと感じたという。

「息子自身もイラストを描くので、そのイラストを用いて商品化しているものも多くあります。昔は私も額に入っているような絵が良い!という先入観もあったのですが、クリエイターさんによっては、「この絵めちゃくちゃ面白いね!」って気に入ってくれて、そういったクリエイターさんと障がいを抱える方の化学反応から面白いものが生まれるということが多くあります。私たちと世界の見え方が違うというか、発想がとにかく面白い。興味関心を極める才能もあり、集中力も高くて、私にはとても真似できないなと驚かされることも多いんです」(安部さん)

そんな『リトルアトリエスイッチ』の活動が、ドキュメンタリーで取り上げられ、千葉や北海道で放送されたのを契機に、ネットショップでは神奈川、北海道を中心に全国各地から商品を買い求めるお客さんがいるそうだ。

イベントや展示会では、純粋にデザインを気に入って買い求めるお客さんが多く、自らが生み出したものが誰かの喜びを生み出しているという経験は、障がいを抱える側にとっても、大変な喜びになっているという。

「ドキュメンタリーに出演した障がい者の方は、もともと人と目を合わせるのも苦手なぐらいだったのですが、テレビを見ていた人から「テレビ出てるの見たよ!」と声をかけられたのをきっかけに、人との関わりもとても積極的になりました。障がいを抱える方は、どうしても人の迷惑にならないようにというのを第一に考えている方も多い中で、自己表現が、社会の役に立っているという実感を得られる活動は、双方にとって良い還元になっていると感じます」(安部さん)

またそういった安部さんの理念に共鳴する企業や、障がい者施設などもプロジェクトに参画している。

ノボリバタを用いたアイテム

「現在、力をいれているのは”ノボリバタプロジェクト”で、廃棄されるのぼり旗を回収し、障がいのある方が布地で加工デザインされた商品を生み出し、それをアイテムとして社会に送り出すプロジェクトです。裂き織りという、江戸時代から東北地方に伝わる、古布を細かく割いて、横糸にして織るという手法を使っています。廃棄されるものに、新たな価値を生み出すSDGsの観点と、障がい者の社会参加に貢献でき、企業としては新しい福祉の社会づくりができるという点に賛同してくださる形で、株式会社ベツダイさんとのコラボも行いました」(安部さん)

企業側も、障がい者支援を行いたいが、どのように関わればよいかわからず、足が止まってしまうケースも多い。そんな中で、障がい者の社会参画と、企業を繋げ、マッチングさせる仲介者の安部さんの役割はとても大きいだろう。

「障がいがある人たちということではなく、職人集団として世の中に定着していくことが目標です。今私が行なっているプロジェクトを一つのモデルケースとして、全国各地でこのやり方が普及してくれればと思っています。そのためには、クリエイターさんや企業さん含め、コラボして巻き込める人を増やすことが必要。巻き込む人が増えるほど、それぞれに参画する意味が増えていきますし、それぞれの発想や視点を通して、互いのリスペクトが生まれているため、関わるそれぞれの人がプラスになるプロジェクトだと実感しています」(安部さん)

のぼり旗だった糸

障がい者と健常者の間には、”遠慮”による薄い膜があるようだと安部さんは語ってくれた。
互いの姿は見えているのに、無遠慮に触ってしまっては、その薄い膜が破れて、相手を傷つけてしまうのではないか?と

その薄い膜をなくす上でも、それぞれの世界の捉え方をクリエイティブという形で、共有することで、遠慮がリスペクトへと姿を変える。

見方を少し変えてくれる誰かや何かと出会うだけで、世界のあり方も大きく変わるかもしれない。

取材・文=SALLiA

 

【展示会情報】
「NOBO +ORI 新たな命を紡ぐ布」
日時:2025年9月13日(土)〜28日(日) 11:00〜17:00(※火・水曜休み)
場所:『TRANSIT』(別府市末広町1-3 レンガホール1F)

『リトルアトリエスイッチ』
住所:大分市片島417-5
電話:097-568-2765
営業時間:※要連絡
駐車場:1台
HP:https://noboribataproject.jp
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