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多様な味わい深さに底がないレトロな喫茶店『喫茶ムムム』【SALLiA’s リトリート第44回】
日本でもカフェという言葉がスタンダードになって久しいが、いまだに私は【喫茶店】という響きと、そこでしか味わえない空間としての魅力に心惹かれやまない。
そんな私の心のど真ん中を射抜いてくれた、喫茶店こそが2016年10月にオープンした『喫茶ムムム』だ。
木を基調としたレトロな内装だけでなく、昔ながらの喫茶店らしさを体現したメニューを提供してくれる喫茶店だ。
来るものを拒まない、どんな人でも受け入れてくれる懐の深さが、喫茶店の良さだとオーナーの廣瀬さんは語ってくれた。
「大事にしていることは”偏りすぎない”ということ。古すぎず新しすぎず、ただシンプルにオーソドックスな喫茶店の良さや魅力を提供できればと思っています。特に『喫茶ムムム』には、年齢性も幅広く、性別も国籍もさまざまで、色々な方が多様な目的でお越しくださいます。カフェだとどうしても目的が限定されることもあり、また若い人が行く場所だから行きにくいと思っている方もいるようで、どんな人でも来るもの拒まずな、間口の広さと懐の深さを持った喫茶店に居場所を見出して通ってくださる方が多いです」(廣瀬さん)
客層は幅広く、10代〜20代の若年層だけでなく、特にコロナ禍以降は、50代以上の日本観光客の来店も増えたそうだ。また100歳近い年齢の常連さんや、別府が好きで旅行の度に来てくれる方、インスタの更新をずっと見てくれている県外の方、そして海外の観光客などがこの店に訪れているという。
個性的な『喫茶ムムム』という名前は、廣瀬さんの出身であるくじゅう連山の山の連なりを表現したそうで、シンプルながらも、印象に残るセンスは名付けにも現れていると感心してしまった。
そして廣瀬さんと、奥さんは揃って外国語大学を卒業しており、英語でのコミュニケーションも問題なく行えるそうで、海外観光客の方たちとの触れ合いによって、海外の文化を知ることにもつながっているという。「英語のメニューも作って、きちんとニーズに対応できるようにしています。例えば、海外の方だと卵でも生が苦手だったりもするので、コミュニケーションをとりながら、「じゃあしっかり卵は焼くようにしますね」と提案をして、メニューを決めてもらうこともしばしばあります。先日イタリアからお越しくださったお客様との会話で、イタリアはどこでも美味しいコーヒーが飲めるイメージがあったのですが、その方のお話をしていると「コーヒーは確かにどこでも飲めるけど、意外と日本の方が美味しく飲める」なんて話してくださいました。『喫茶ムムム』を通して世界の文化に触れることができて、私たちもとても楽しく新鮮な気持ちで日々お客様と向き合うことができています」(奥さん)
また海外圏の地域によって、コーヒーのニーズも異なるようで、ヨーロッパ圏だとコーヒーといえばエスプレッソだが、アジア圏だとスタバの基準が定着しているため、カフェラテやアメリカーノを求める方が多いそうだ。そしてそれぞれの由来や言葉の意味も知っておかないと、さまざまな国の文化を伴って『喫茶ムムム』にやってくるお客さんのニーズに応えられないのだと、奥さんは語ってくれた。
私も『喫茶ムムム』を通して世界と触れ合うことができてしまって、なんだかラッキー。
そして別府のカフェや喫茶店では珍しく『喫茶ムムム』はモーニングや食事のニーズが多いのだという。それもそのはずだ。だってめちゃくちゃ料理が美味しい。
私は昔ながらの喫茶店に憧れていて、特にナポリタンやアイスクリームが乗ったメロンソーダを食べるのが夢だった。子どもの頃、母や祖母と喫茶店に入る機会はあったのだが、食が細く、「晩御飯が食べれなくなるから」という理由によって、私が子どもの頃にナポリタンやアイスクリームがのったメロンソーダにありつくことはできなかった。
だがしかし、私は大人になった。あの時の夢を叶える時が今、やってきたのだ。

「ナポリタン」950円(単品)
まず運ばれてきたのは、『喫茶ムムム』人気のナポリタンだ。
一口頬張ると、トマトケチャップの甘酸っぱい香りと味が口いっぱいに広がっていく。もちもち食感の太めのパスタが噛めば噛むほど、味わいが深くなり、時折ブラックペッパーの刺激が文字通り良いスパイスになっているのを感じる。ピーマンとともに麺を味わえば、甘酸っぱさにほんのり苦味が加わり、上にのった目玉焼きと絡めれば、まろやかさがアップして、一口ごとに違った味わいに変わっていく。
これは童心にもどって、口いっぱいに頬張って食べるとさらに美味しくなるやつだ!!
一口ごとにワクワクが止まらない。なんだかすっかりわんぱくな気分になってしまう。
ナポリタンがこんなに一口ごとに表情を変えるなんて、私は知らなかった。子どもの頃、もしこれを食べていたら、私はまた違った大人になっていただろうか?レトロな世界観を持つ『喫茶ムムム』という空間にいるからか、自然と懐古的な発想になってしまうが、それもまた心地よい。なんだか大人のまま、子どもの頃にタイムスリップしたかのよう。
だが、いつまでも郷愁に浸っている場合ではない。
なぜならお楽しみは、ナポリタンだけでは終わらないからだ。

「メロンクリームソーダ」750円
子どもの頃、喫茶店で食べるのが夢だったシリーズその2。メロンクリームソーダのお出ましである!
まずは一番上にのっているさくらんぼから、いただくことにする。
子どもの頃、このさくらんぼが好きで、これだけ親からもらって食べさせてもらったなあ…。上にのったアイスにスプーンを入れると、宝石のような緑色のメロンソーダにアイスクリームの白色が、溶けていき、まるで太陽に宝石をかざしたかのようなきらめきだ。アイスをすくって食べると、メロンソーダと程よくからみ、甘さがベースにありながらも、後から炭酸の爽やかさがやってくる特別な味わいになる。そして今度はストローでメロンソーダを飲んでみると、メロンソーダがベースになることで、あとからアイスの甘さがやってくる、甘酸っぱい新たな味わいになる。ナポリタン同様、メロンクリームソーダがこんなに味わい深くコロコロと表情を変えるものだなんて、やっぱり私は知らなかった。
そしてメロンソーダの上にアイスを最初に乗せようと思った人は一体誰だ。天才か。
私にとって、オーソドックスな喫茶店で、ナポリタンとメロンクリームソーダをいただくことは、長年の夢で、大袈裟かもしれないが、大人になったら叶えようと思っていた目標でもあった。
それが今叶い、私はやっと大人になれた気がしている。遅ればせながら大人の階段を一つ登ったわけだが、やはり『喫茶ムムム』での体験を通じて、喫茶店でしか味わえないものがあるのだろうなと改めてしみじみ思った。
東京では、都会的なカフェが多く、今までオーソドックスな喫茶店になかなか入る機会は少なかった。入ったとしても、打ち合わせで忙しなく、コーヒーを一杯飲んで終わるということばかりで、店内の雰囲気ごと味わうというような機会には恵まれなかった。もちろん都会的なカフェも好きなのだが、ゆっくり何事にも追われずに過ごしたいと思うのは、やっぱり『喫茶ムムム』のようなオーソドックスな喫茶店だなあと、素直に思った。
なぜそう思ったのか?
喫茶店という居場所の魅力はレトロな内装で決まるものでもなく、喫茶店らしいメニューの提供だけでもないだろう。『喫茶ムムム』の全ての要素が、余計なものをお客に与えない、削ぎ落とされたことによって生まれる”余白の安心感”というものがあるからだと私は思った。廣瀬さんは「お客様が安心して過ごせるように、そして喫茶店らしさの中から選びたいものを選べるように、”余計なことをせずシンプルに”ということを大切にしています」と話してくれた。
オーナーである廣瀬さんや奥さんの親しみやすさや心配りはもちろんだが、どこか懐かしさを覚えるメニューだけでなく、ちゃんと令和らしいバランス感覚のあるメニューのラインナップなど、そういったシンプルかつ余計なものがないことで生まれるブレなさによる安心感こそが、『喫茶ムムム』という空間をゆっくり味わいたい理由そのものだ。
取材・文=SALLiA
電話:080-3119-5261
営業時間:9:30〜16:00/土曜〜17:00(フードLO15:00/ドリンク・スイーツLO閉店30分前)
定休日:不定 ※Instagramを確認
駐車場:1台 ※後藤月極駐車場11番
HP:https://www.instagram.com/kissa_mumumu/
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