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育児をきっかけに移住を意識 親として再び、かつて暮らした地へ【・・大分、変わる。おおいた移住 Dive to Change・・⑨】
田舎暮らしを美化せず、
移住先のリアリティーを見つめて
玖珠川の支流・町田川沿いにこんこんと湧く、宝泉寺温泉郷からほど近い集落に建つ自宅を案内してくれたのは、2024年2月の移住と同時に家主となった田中脩斗さん。詳細な築年数は不明、おそらくは昭和初期頃の建物という古民家の内装を、奥さんと幼い娘さんのために自らの手で様変わりさせました。
「空き家バンクを通じて家を購入したのですが、僕の場合は物件を検討するにあたって重視したのは立地だけですね。改修が必要になることはわかっていたので、親としては室内の状態を気にするよりも、地域の目が子どもに行き届く場所に家を構えた方が良い。土地勘のない妻にとっても、買い物などの利便性が優先させるべきだと思いました。だから私が契約前に確認したのは、この家の間取りだけ。そこさえ把握できれば問題はないと思い、愛知県にいながら家を決めたんです」。
淡々と穏やかに、けれどはっきりと自らの移住に関する優先事項を語る田中さんは、5〜10歳までの5年間は家族とともにアメリカで過ごし、帰国後は複数回の転校を経て東京都の中学・高校に通うなど、多感な子ども時代を過ごした人。その後は以前から興味のあった自然・生物学の分野を専攻するために青森県の大学に進み、22歳で再びアメリカへ。さまざまなプログラムを利用しながら将来を模索し、自分自身と向き合う1年を過ごしていたとき、日本に戻るきっかけとなったのが、偶然目にした環境省による非常勤職員の募集でした。勤務地は縁もゆかりもない、大分県玖珠郡九重町。けれど“どうせなら行ったことがない土地に向かおう!”と決めた田中さんは、面接を受けることを決心。採用が決まり、新たな生活がスタートしました。任期は2014年から2年間。もちろん、当時24歳の田中さんは、約10年のときを経て自らが九重町に戻ってくるという未来は、この時点で想像もしていません。
「自然・生物方面の仕事はずっとしたいと思っていましたし、求人が出ているのならこの流れに乗るべきだと思いました。あの頃は20代前半という若さもあり、寝袋ひとつだけをバイクに積んでここまで来たのですが、アパートの上の部屋の方が“3月はまだ寒いから”と暖房器具を貸してくれたことは今でも覚えています。ほかにも業務を通じて多くの地元の方と関わり、その度に人柄の温かさを感じていました。自然について驚いたのは、山との距離の近さ。手を伸ばせば届きそうな位置というのかな? すぐにでも登れてしまいそうな距離に山を感じたのは九重だけですね」。
任期終了後は東京に戻り、都市公園のマネジメントなどを行うNPO法人に所属。さらに2018年には結婚し、愛知県に拠点を移します。造園会社で引き続き指定管理業務に携わる傍ら、2022年に第1子が誕生。そして1年間の育児休暇をとり、わが子と向き合う日々のなかで田中さんの心に芽生えたのが、“どこで子育てをするのか”という疑問だったのです。
移住の目的が明確化されていれば
アクシデントも乗り越えられる
“子どもには、家族とは異なる集団生活の中で社会性を身につけてほしい”という思いから、もともと早い月齢での保育園入園を希望していたという田中さん。けれど愛知県の保育園事情を耳にするたびに選択に悩み、当時暮らしていたアパートでは成長した娘さんが室内をのびのびと走り回る姿も想像ができなかったと話します。そこで思い切って奥さんに“子育ての環境を変えたい”という考えを打ち明けてみると、返ってきたのは意外にも「確かにこの環境じゃないのかもしれないね」という言葉だったそう。それからは候補地についての話し合いを重ねる日々。
「瀬戸内海も良い、都会すぎる町は違うよね、なんて話を夫婦でたくさんしました。でもさまざまな土地の名前を挙げるうちに、以前暮らしていた九重町の話になって。ここなら知り合いもいるし、土地勘もある。0じゃなくて1からのスタートができるよ、と伝えると妻も納得してくれました。“こんなふうに育ってほしい”という娘に対する思いは親として当然あるのですが、自分の場合はどちらかというと、僕自身が九重町で子育てをしてみたいという思いが強かったですね。子どものために自然の多い場所へというよりは、この場所で娘に何を教えられるのか?というと部分を優先させたいと考えました」。
2023年の秋ごろに移住を決め、翌年2月に田中さんが一足早く九重町へ。家族よりもひと月早く現地にやってくることで自宅のDIYを進め、自らの育休が終了する4月までにリノベーションを終えることが目標でした。けれど家の傷んだ箇所は想定よりも多く、完成したのは5月。予定がずれてしまったため、田中さんは1カ月ほど無職になってしまったと言います。
「仕事ありきの移住ではなく、“ライフスタイルに仕事を合わせる”という考えでやって来たので心配はしませんでした。DIYを進めながら日雇いで働くこともできますし、その場で最良の選択をしようと考えていました」。

Before

DIY風景

Before

After

After
その後、隣町で就職が決まるも、地元に関わりたいという思いから現在の『ここのえ町づくり公社』へ。本年度は町内の観光関連事業者などから幅広くデータを収集し、見えてくる数字をもとに通過型観光地からの脱却や、冬時期の誘客などの課題と向き合っています。
「移住を検討されている方には、単にライフスタイルを変えたいと思い、住まいを移せばその悩みが解決に向かうと考えているのなら、それは間違いだと伝えたいですね。移住はあくまでも手段。その先で自分は何をしたいのか。ビジョンをしっかりと持っている人、もしくは僕のように“自分でどうにかするタイプ”の人にとってはおすすめの方法だと思います。自分が描いた理想の通りに生活がそっくりそのまま変わる、ということはありえません。郷に入っては郷に従えという現実も含めて受け入れ、その上で“必要以上の無理はしない”という意志管理もできた方が良いのかな。仕事や働き方は今の時代なら広く選択肢を持てると思います。希望する職種がしっかりあれば別ですが、仕事をライフスタイルの中に入れられる人なら移住という選択肢も楽しめると思います」。
この先の夢は、自信を持て九重町を“地元”と呼べるようになること。家族3人の生活はまだ始まったばかりです。
<移住者メモ>
お名前 | 田中脩斗(たなか しゅうと)さん |
出身地 | 東京都 |
前住所 | 愛知県 |
現住所 | 大分県玖珠郡九重町 |
年齢 | 35歳 |
家族構成 | 妻・娘 |
@oita_kokonoe |
田中さんに聞いた、九重町のおすすめスポット
①泉水山
写真提供:九重ふるさと自然学校」.jpg)
写真提供:九重ふるさと自然学校
泉水山では春を迎える前に野焼きが行われるのですが、その後は少しずつ緑が芽吹き、続いて黄色い花が姿を現します。その時期だけの黄緑色に染まった山肌が本当にきれいで、僕の大好きな景色。子どもの名前の由来もそこにあります。
写真提供:九重ふるさと自然学校
②やまなみハイウェイ
タデ原湿原や長者原、くじゅう連山を一望できる直線道路「やまなみハイウェイ」はバイカーのロマンが詰まった場所。僕もバイクに乗るので、景色を見ながらのツーリングは最高です!
③ 樂樂(らくらく)
通勤途中に偶然見つけた食事処ですが、ジビエが大好きなので訪ねてみました。店主の方が自ら狩猟をした猪や鹿などを提供しているようで、料理の内容はその都度変わります。メニューは単品だけなので、色々と注文ができるところも気に入っています。
電話:0973-78-8441
営業時間:11:00〜14:00(LO13:30)
定休日:不定
HP:https://www.instagram.com/raku_raku_oita/
大分県/九重町/移住/田舎移住/おおいた暮らし/ここのえ/
●九重町移住関連サイト
https://kokonoe-iju.com/support
●九重町空き家バンク
https://kokonoe-iju.com/housing
大分県には、全国各地から様々な移住者の方が集まっています。
この連載記事では、それぞれの移住のきっかけや、今の暮らし、移住してよかったこと・こまったこと、今後のビジョン、住んでいる各市町村の支援情報など、移住者のリアルを取材していきます。
運営:大分県
制作:おおいたインフォメーションハウス株式会社
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〈大分県への移住に関するお問い合わせ先〉
大分県 おおいた創生推進課
電話:097-506-2038
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受付時間/8:30~17:15( 土・日曜、祝日を除く)
〈大分県 移住公式サイト〉
〈大分県移住イベント特設サイト〉
〈オンライン移住相談窓口を開設しています〉
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