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2つの表現の場を持つ美容師として 大分と東京六本木の2拠点で働く【・・大分、変わる。おおいた移住 Dive to Change・・⑧】
どこに住み、どう働くか
2つの軸を見つめ直せば未来が変わる
本当に美容室がある? お店の場所を知らせる看板の矢印は、確かに目の前の細道を進むように伝えているものの、あまりの人の気配のなさからハンドルを握る力が少しずつ強く…。けれどよし!と心を決め、深呼吸をして車を走らせると、緑がうっそうと茂る山々を背景に佇む古めかしい建物にたどり着きます。そして多くの人がきっと一度は目にしたことがある、レトロなデザインガラスの引き戸を開けると、外と室内の様子のギャップにびっくり。その空間は確かに美容室で、オーナーの栗原さんが出迎えてくれました。
まずは栗原さんに美容師を志した理由を尋ねてみると、その答えは“手を動かす仕事をしたかったから”とのこと。「机に触れると眠ってしまうくらい勉強が不得意で。それなら職人になろうと考えました。家具職人と花火職人も検討したのですが(笑)、当時はまだ高校生だったので世間を知らなくて。工房にこもって作業をする仕事よりも、いろいろな人との会話を通じて世界が広げられそうな美容師になってみたいと思ったんです」。
そんな10代の頃の決断から現在まで、栗原さんはずっと美容師一筋。忙しくも充実した日々を送っていましたが、30代前半から移住に興味を持つようになったと話します。
「仕事について先々のことを考えてみると、美容室を開業するにしても自分は人を雇うタイプではないと思いました。すると1人で店を切り盛りすることになるわけですが、自分だけだとできる仕事量や売り上げは限られています。それならやっぱり経費は安い方が良いですよね。美容師としての仕事の幅、自分がこれからしたいこと、生活に広がりを求めたとき、家賃の高い東京で頑張るよりも移住をした方が良いと思ったんです」。
都会での暮らしに疑問を持ちながらも時間が流れるなか、心が動いたのは2020年。15年勤めたサロンを退職し、前年には結婚と第1子が生まれたことから、栗原さんの環境は仕事・プライベートの両方で大きな変化に直面していました。
「美容師としてのスキルを上げる、という意味では前の職場のままでも良かったのですが、“家族と一緒に新しい生活をつくる”という点では環境を変える必要があると思いました。それに私も妻も東京でずっと子育てをする、ということはあまり考えられなくて。外にいても家にいても、周りの人に気を使ってしまうことが多かったです」。
東京から離れることを決めた後は候補地を福岡県に絞り、同年の秋には下見のために現地へ。けれどその前に奥さんの友人に会おうと大分県湯布院に立ち寄った際、夫婦そろってこれまでは関心のなかった大分に興味が湧きます。わずかな時間ながらも滞在中の居心地の良さを忘れられず、東京に帰った後は情報収集。そこで豊後高田市というまちがあることを知り、妊娠期から高校生まで切れ目なく安心して子育てができる多様な支援策や、宇佐神宮の影響を強く受けて発展した独特の山岳仏教文化に気持ちが高まります。
やりたいこと、できること。
求められることの交差点を見つける
栗原さんが実際に豊後高田市を訪ねたのは、2020年の12月末頃のこと。その時点でほぼ心は決まっており、空き家バンクを通じてリサーチしていた物件を1泊2日の滞在中に見学。そのわずか3カ月後には、念願の地方暮らしをスタートさせたのです。
「移住にはたくさんの選択肢があるので、長々と迷うよりはこのまちが好きかも!とピンときたに動いた方が良いと思います。東京で豊後高田市について調べていたとき、地域の重要文化財・熊野磨崖仏(くまのまがいぶつ)についても知ったのですが、実は息子が観ていたテレビ番組で流れる曲の中でその名前を聞いたことがありました。息子がその歌が好きだったこともあり、何かの縁かもしれないと思って。もちろん移住を決めた理由はこれだけではなく、山口県にある妻の実家との行き来のしやすさといった事情もあります。でも、このくらいの勢いで行動に移した方が楽しいですよ」。
そして栗原さんは移住から2年後となる、2024年5月に『美容室 土』をオープン。移住から間もなくスタートさせた、東京六本木との2拠点ワークは今も続けています。
「住まいを移すと決めたとき、元々のお客さまには“大分に行っても東京には時々戻るから、良かったらまた髪を切らせてね”と話をしていました。当時は2カ月に1回くらいのペースで向こうに行けたら理想的だと考えていましたね。だけどいざ連絡をしてみると、想像を超える人数の方が来てくれて。それならもっと行き来する頻度を増やそうと考えているうちに、いつの間にかフリーランスの美容師として定期的に東京に足を運ぶサイクルができていきました」。
『土』のオープンに際しては、2年という時間をかけて改修を行っていた栗原さん。その間の豊後高田市での生活は、一体どのように送っていたのでしょう。
「店舗物件は移住後に探そうと思っていたので、見つかるまでは豊後高田周辺の美容室で働くつもりでした。でも当時はコロナ禍で東京を行き来する自分を雇ってくれる店はどこにもなく、工場でのアルバイトを考えていたときに見つかったのが、平日タイムサービス690円のカットで知られる全国チェーンの美容室でした。今までとは全く違うお客さまへの接客は新鮮で刺激を受ける毎日でしたね」。
予想外の出来事に直面しても、その選択から広がる未来を信じて笑う栗原さん。豊後高田市での経験すべてがその後の成長の糧になっていると話します。自らの美容室の屋号も、さまざまな有機物が混ざり合い、長い年月をかけて形成される土のように、ゆっくりと時間をかけて何かになればいいという思いを込めているそう。
「息子はまだ小さいですが、“父ちゃんはお前が生まれたからこそ、自由に満足した人生を生きられたよ”といつか伝えたいですね。自分と家族、みんなの希望を叶えたい、という思いが心の中にずっとあるのかもしれません。そして美容師の仕事が好きだからこそ、現役の間に挑戦をどんどんしたい。でも東京ではそこまでの余白を心に持てなかったので、ここに来て良かったと思っています」。
<移住者メモ>
お名前 | 栗原渉(くりばら わたる)さん |
出身地 | 埼玉県 |
前住所 | 東京都 |
現住所 | 大分県豊後高田市 |
年齢 | 43歳 |
家族構成 | 妻・息子 |
SNS | https://www.instagram.com/tuchitashibu |
電話:090-6167-1308
営業時間:受付9:30〜17:30※完全予約制
定休日:月曜※東京出張あり
HP:https://www.instagram.com/tuchitashibu
☆豊後高田市は全国トップレベルの子育て支援を「本気」で目指しています!!
豊後高田市では、妊娠期から高校生まで切れ目なく安心して子育てができる支援を行っています。
詳しくはコチラ⇒https://www.city.bungotakada.oita.jp/soshiki/4/2381.html
☆【全国初】13年連続ベスト3達成!-宝島社「2025年版第13回住みたい田舎ベストランキング」-
豊後高田市は、このランキングで初代1位を獲得しており、その後もベスト3以内のランクインを続け、全国で唯一「13年連続ベスト3」を達成しています。さらに、今回は全国初となる5年連続全部門第1位に輝きました。
詳しくはコチラ⇒https://www.city.bungotakada.oita.jp/soshiki/5/2511.html
栗原さんに聞いた、豊後高田市のおすすめスポット
①熊野磨崖仏(くまのまがいぶつ)
大日如来像と不動明王像が巨大な岩壁に彫られた国内最古・最大級の磨崖仏。お不動様は微笑んでいるような優しい顔立ちをしているのですが、実は生まれたばかりの頃の息子によく似ています。鬼にまつわる伝承も面白いと思いました。
②白鳥神社(しらとりじんしゃ)
桂川沿いの小田原地区にある歴史ある神社。初めて訪れたときはその不思議な雰囲気に驚きました。本堂の脇には体が半分地面に埋まった仁王像が建ち、拝殿の前では愛らしい狛犬が姿を見せてくれます。
③ そば 六郷 rikugou(リクゴウ)
昔懐かしい農村風景を残す豊後高田市田染の小崎地区で営業する蕎麦処。古民家を改装した素敵な空間でコース料理を楽しむことができるのですが、料理が美味しいのはもちろん、オーナーの生活や仕事に対する考え方にも良い刺激をもらっています。
電話:0978-25-4336
営業時間:12:00~16:00スタート/17:00-19:00スタート
定休日:不定
HP:https://www.instagram.com/soba.rikugou
大分県/豊後高田市/移住/田舎移住/おおいた暮らし/豊後高田/美容室/土
●豊後高田市IJU(移住)支援サイト
https://bungotakada-iju.jp
●豊後高田市移住定住インスタグラム
https://www.instagram.com/bungotakada_city_iju
大分県には、全国各地から様々な移住者の方が集まっています。
この連載記事では、それぞれの移住のきっかけや、今の暮らし、移住してよかったこと・こまったこと、今後のビジョン、住んでいる各市町村の支援情報など、移住者のリアルを取材していきます。
運営:大分県
制作:おおいたインフォメーションハウス株式会社
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〈大分県への移住に関するお問い合わせ先〉
大分県 おおいた創生推進課
電話:097-506-2038
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受付時間/8:30~17:15( 土・日曜、祝日を除く)
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