大分のおいしいネタ、抽出しました。

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俺は中津の冴えない高校生。冴えないながらも彼女と時々電車に乗って中津から大分に遊びに行くのが楽しみなんだ。

『ハチャメチャクラブ』(通称ハチャメチャ)は彼女の好きなお店のひとつで今回も例外なく立ち寄っている。ちょうど今、大一マートとフォーラスにある2軒のハチャメチャをはしごして、お小遣いの中から新しいお洒落をするために欲しい物を探しているところだ。

大一マートの中のハチャメチャは隣が魚屋だからか、「この前買ったリュックに魚の臭いが付いちょったけん、2~3日干した」と笑いながら言っていた彼女の背中には今日もそのベージュのリュックがあってお気に入りのよう。

賑やかでカラフルな店内でその後ろ姿を見ていた正にその時、突然異変が俺を襲った。

あれっ、ベージュのリュックの背中が歪んでいる。お店の中も目に映る何もかもがマーブル状に歪んで訳がわからなくなっていく。やばい…何か得体の知れない時空に飲み込まれていくようだ。たまらず手を伸ばし叫ぶ。

「おい、早くこっちに来い!巻き込まれよんやねーか!早く!!!来いっちゃ!!!早く!!!うわー!!!」

気付けばさっきまでとは真反対の暗い部屋と静寂。夢だった。あの頃にはもう戻れないが、朧げな記憶があるからか時々あの頃の大分を夢にみる。

それが唯一あの頃の大分と現実の世界を繋ぐ橋渡しのような役割を担っていて…。

当時大分の女子中高生を中心とした若者に絶大な人気を得ていた『ハチャメチャクラブ』はポップでカラフル、お洒落で楽しくもどこか毒々しくちょっと危険な雰囲気も…要は様々なニュアンスが店内に詰め込まれた自由で何でもありのお店だったように思う。

街でハチャメチャの黄色いショップ袋を持った人とすれ違う度に、見知らぬ相手にもどこか親近感を感じていた。

今のようにネットが普及していなかった90年代、同じ大分県とはいえども最北端と市内から離れた中津の若者にもハチャメチャの影響はあった。おそらく県南、県西にもあったのではないかと想像する。

そんなハチャメチャの名前を20数年振りに聞いたのが昨年2024年の『落合商店の週末⑧』CHAOSの力さんにインタビューをしていた時。「ハチャメチャにおった子がアミュで雑貨屋を集めたポップアップをやっている」と教えてくれた。

長らく失っていた記憶がうっすらと断片的に蘇りながら、その数日後に元ハチャメチャの店長だった人と繋がった。それから竹町で10日間という期間限定でポップアップをしたかと思えばなんと次は実店舗をオープン、復活するとこととなった。

考えてみるとあの頃、若者が集まる街には必ずあった謎の雑貨店が今ではその殆どが姿を消している。ハチャメチャが大分で復活をするというのだから、何かが起こる気がした。

場所はガレリア竹町の『布屋ビル』の奥。

この薄暗い通路を進むのだ。 途中壁には動物たちの楽器を演奏する壁画が。 

ポップな世界観にも関わらず、無表情な動物たちからはどこか危うさと狂気も入り混じり、あの自由で何でもありのハチャメチャ特有の世界観を少し感じた。壁画を通り過ぎた後だった。薄暗い通路に突然現れたのは…。

窓越しの煌びやかな世界。看板には『浪漫雑貨店』とある。

ハチャメチャではないようだ。しかし、この通路に雑貨店はこの浪漫雑貨店しかない。恐る恐る気付かれぬよう中を覗き、得体の知れぬ恐怖感が湿らせた両手でそっとドアを引いてみる。

果たしてここで合っているのか?

ドアの向こうはさっきまでとは真反対の色取り取りの世界と賑やかさが広がっていた。

もしやこのビルの通路が夢と現実の境目なのか…?だとすると、どうせ今回もまた夢だろう…。と背中にベージュのリュックを探すが見当たらない。

隙間を許さぬように陳列、ディスプレイされた雑貨や照明器具、古着の数々で店内は埋め尽くされている。BGMは昭和歌謡。

デジャヴだな、今回は一人で来た設定の夢なのか。そろそろ店内が歪み始める頃だ。ここで訳が分からなくなる…と思ったその時だった。

「いらっしゃい。」と声のする方に視線を送るとオーナーのマユコさん。今回はどうやら夢ではないようだ。

『ハチャメチャクラブ』元店長、現『浪漫雑貨店』オーナーのマユコさん

あの頃の高校生だった俺には、お店のスタッフ皆すごく派手でお洒落に映っていていた。令和の今でもマユコさんのスタイルは派手で自由、その中に絶妙なノスタルジー感をミックスさせて魅力的に映った。

そのマユコさんが「雑貨屋魂」を掲げて『浪漫雑貨店』をオープンさせたのだ。なのでここが復活を遂げたハチャメチャと思って間違いない。店内の内装はマユコさんがDIYで手掛けた。

実はマユコさん『reks』というDIYクリエイターでもあり、全国区規模で仕事をする側面もある。話を聞くと、ハチャメチャ時代の店内作りやディスプレイ、自室の改造を通してDIYに目覚めたそう。

「そのDIYにも根底には雑貨屋魂があるんです」。

90年代前半のマユコさんがまだ10代だった頃、大分市内は派手な若者が多くいたからか、そのような人が集まるお店が数件あったそうだ。

その中の1件だったハチャメチャに飛び込み、店内の什器やディスプレイを作っていく中で雑貨屋魂が芽生えたのだという。ネット社会になった頃に、自身が手がけたDIYを発信し続けたことがきっかけで全国へと広がった。

そんな雑貨屋魂全開の店内には、マユコさんセレクトの商品が続々と入荷してくる。店内のディスプレイ、陳列は勿論なのだが「お店の人は歩くマネキン」というマユコさんの考えから「売りたい、打ち出したい物」を身に着けるという。彼女のこの思考がオンリーワンのファッションスタイルを作り上げているのだろう。

ふと壁に目をやると、見覚えのあるショップ袋が…。なんとあの当時のハチャメチャのショップ袋が在庫限りで販売されていた。

復刻ではない、当時のハチャメチャクラブのショップ袋 30円

当時、大分の若者が持っていたのがこの袋だ。学校で使う道具などを入れて登校する子も多かったという。当時を知る人はあの頃の思い出や感覚を回収しに、ハチャメチャを経験していない若者も是非遊びに行ってもらいたい。

平成ポップと昭和レトロは今の時代にはない楽しさを教えてくれると思う。

さて、そろそろまた薄暗い通路を通って現実の世界に戻るか…。俺も当時の彼女もそれぞれの道を歩いていて会うことはない。

そればかりかハチャメチャに通っていた名も知らない同年代の皆もどこで何をしているのか知る術もない。あの当時を知る人たちと関わることがないからこそ薄れていく記憶。あれは幻想だったのではないか…。その想いをあの時代に確かに存在したあの店が現実のことと肯定をしてくれた。

そしてあの頃には戻ることはでいないとしてもこの薄暗い通路が橋渡しの役割をして、渡ったその先にはあの頃の世界があるのは素敵なことだと思える。

マユコさん。『CJO』で連載も持っているので、要チェック

浪漫雑貨店
住所:大分市中央町3-6-29 布屋ビル1F
電話:なし
営業時間:12:00~18:00
定休日:不定(Instagramにて確認)
駐車場:なし
HP:https://www.instagram.com/roman_zakkaten
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